イギリスのボーディングスクール 歴史教育

 

二週間のハーフタームが終わり、お決まりのボンファイアナイト*に参加して娘をボーディングハウスに送り届けた。

 

今年のハーフタームは娘と日本に一時帰国して、秋の味覚を堪能しすぎた。日本に行く前に、娘をどこに連れて行こうかと考えていたのだが、江戸東京博物館に連れて行きたかった。私の好きな博物館の一つでもある。

 

でも結局行かなかった。第二次世界大戦の展示での娘の反応を心配したからだ。

 

ハーフタームが始まって間もない頃、娘とお茶を飲んでいたら、娘が急に「日本は第二次世界大戦で酷いことしたんだね。」と寂しそうに言い出した。どんな会話の流れで大戦の話になったのかは定かではないのだが、ハーフタームの直前の歴史クラスのテーマが第二次世界大戦だった。(イギリスでは、日本のように時系列的に古代から歴史を学ぶということをあまりしない。毎学期ごとにテーマがあって、それを掘り下げて行く。昨年は、ギリシャで始まり、産業革命、第一次世界大戦だった。)

 

「あ、そうか、外国で歴史を学ぶというのはこういうことなのか」というのが私の最初の反応だった。国が異なれば、歴史の教え方が異なるのは当然だ。私は第二次世界大戦を学んだ時は日本にいた。私はラッキーだった。高校の世界史の先生が教科書に書いてないことばかり教えてくれた。受験用の世界史の勉強は勝手に家でやってくれと言われたことを覚えている。

 

娘の学校はイギリスにあってイギリスのカリキュラムに沿った教え方をしている、と言っても、クラスの半数は、外国籍、片方の親が外国人、または外国生まれ外国育ちという背景の生徒で構成されている。歴史、特に複数の国の事情が入り組んでいる近代史をどう教えるのだろうと興味が湧いてきた。

 

そこで、好奇心の赴くままに、歴史の先生にメールをして率直に聞いてみた。彼女からの返事がなかなか面白かったので紹介したいと思う。

 

「私が生徒たちにまず伝えたいのは、歴史は真実ではないということです。歴史=History=Histoireつまり、歴史には多かれ少なかれ物語的要素が含まれると思っています。物語を語るときには個人の主観が入るように、歴史にも個人の主観、解釈が混ざります。例えば、第二次世界大戦で原子爆弾が広島と長崎に投下されたというのは事実ですが、その事実の裏に隠れた理由の解釈は何通りもあると思っています。私は歴史の授業を通じて生徒たちに『なぜこれが起こったのか』を自由に考えるように、と言っています。そしてなぜそう思うのかを自分の言葉で説明することの大切さを学んで欲しいと思っています。ご家庭でもどんどん歴史の話をしてください。」

 

残念なことに、この返信は我々がロンドンに戻ってきてから届いたので、江戸東京博物館には行かずじまい。行けばよかったと後悔した。

 

*ボンファイアナイト 別名 ガイフォークスナイト 

https://ja.wikipedia.org/wiki/ガイ・フォークス