イギリスのボーディングスクール 「いじめ」はあるか
映画や小説に登場するボーディングスクールのイメージが影響しているかもしれません。娘がボーディングスクールに通っている、と言うと聞かれます。
「いじめとかスゴそうね。」
ボーディングスクール、デイスクールに限らず、「いじめ (Bully)」はイギリスの社会問題の一つです。いじめが原因で自ら命を絶ってしまった子供のニュースも耳にします。そして、イギリスの学校のウェブサイトに行くと、例外なく、その学校の「いじめ対策」が詳しく説明されています。どの学校も共通して「いじめは許さない」と言う毅然とした姿勢で。まあ、これはイギリスの学校でも日本の学校でも同じですよね。
個人的な意見ですが、いじめは、いつでも、どこでも起こりうると思います。(話は逸れますが、大人の世界でもいじめはあります。イギリスの職場で私が目撃したいじめは壮絶でした。これは、また別の機会に。)
我が家の娘も経験しました。
少し前になりますが、イースターの休みが終わろうとしていたある日、いきなり娘から打ち明けられました。「仲間外れにされていて寂しい。学校に戻るのが楽しみでない。」
「うわー、娘からの告白がこんな形で来るとは。」
驚いたと同時に、信頼していた学校なのにな、と少しがっかりしました。
娘に動揺を悟られないように、5W1H的な質問を重ねているうちに、言葉少なに語り出した娘。最後は泣き出してしまいました。
私も中学時代にいじめられた経験があります。でも三十年前の経験なんて、娘を前にしてなんの説得力もない、自分の無力さを感じました。
娘が一通り話し終えたところで、「ママとパパにどうしてほしい?クラスの先生に話してほしい?それともボーディングハウスのハウスペアレンツに話そうか」と聞きました。内心「嫌だと言うだろうな」と思っていました。私だったらまず、いじめが発覚した後の仕返しを恐れます。娘が嫌だと言っても、学校にメールした方が良いかな、とも考えていました。
しばらく考えていた娘は、「まず自分で先生に話してみる。」と。正直驚きでした。だって、意地悪な見方をしたら、告げ口です。チクったと言われかねません。悪化するリスクを孕んでいます。たとえ純粋に助けを求めただけだとしても。
でも、娘が自分の意思で決めたこと、と静かに見守ることにしました。
もちろん、内心穏やかではなかったです。
その夜は娘の寝顔を見ながら、まさか自分の娘がいじめられるようなことになるとは、、、私の育て方に問題があったのだろうか、グルグル考えていました。(娘に何かあるたびに自分に原因があるのでは、と思うのは私の癖です。)
イースター休暇が終わり、娘を学校に送り届ける時の会話は、
「本当に大丈夫?」
「うん。」
「先生と話したら教えてね。」
「うん。」
二日経っても、娘からの連絡はありません。
三日後、娘に電話をかけたついでに聞きました。
「先生と話した?」
「うん。」
「それで?」
「もう、大丈夫。」
「もう仲間外れにされてないの?」
「うん。友達は彼女だけじゃないし。」
拍子抜けしました。一瞬「本当に大丈夫かな」とも思いましたが、
娘の声の調子は、心配しなくてよい、と確信させるものだったので、質問責めにするのもどうかと思い、そのままに。
どうやら一件落着のようです。
この件を通じて良かったなと思ったことが三つありました。
問題に直面した娘は自分から先生に助けを求めた。後で「仕返し」に会うことを心配せずに。
先生に助けを求めた後に、すぐに問題が解決された。そして、それがぶり返すことが(今の所、半年以上経っても)ない。
その後、「仲間外れのリーダー的な女の子」とは普通に接している。新しい学年になって別々のクラスになったとはいえ、ボーディングハウスではいつも一緒、どうやっているのか詳細はわからないが、普通に学校生活を楽しんでいる様子。
先生からの連絡も無し。
正直、娘の先生がどのような話を娘たちにしたのかはわかりません。どんなマジック(私にとってはマジックとしか思えない)を使って問題を解決したのかもわかりません。
ただ、今回の経験を通して、娘の通う学校を今まで以上に信頼するようになりました。少しでも疑った自分を恥ずかしいとも思いました。
上にも書きましたが、いじめはどこでもいつでも起こりうる。大切なのはいじめのサインを目撃したら、または、自分がいじめられていると感じたら、深刻化する前にすぐに先生の助けを求められるような環境づくりなんだと思いました。
そして、先生たちはプロ。仕返しを助長するような方法で解決することはしないし、いじめが解決された後にも、普通の生活を送るように配慮してくれます。
学校というコミュニティにとって、親の役割はとても重要であることは間違い無いのですが、親はあくまでも、外から見守る存在、必要な時(求められた時)に惜しみなく手を差し伸べる存在でいた方が良いな、と思った経験でした。