いらいらしてからじわじわくる "Harmless Like You"

近所の本屋さんで見つけてタイトルに惹かれて書いました。ジャケ買いでも、書評買いでもなく、タイトル書い。

自分と少しだけ境遇の似ている女性の話。外国で日本人として育ち、国際結婚して所謂ハーフの子供がいて、、というところだけですが。

彼女、結婚をして出産した後で、ある日突然、出て行ってしまうのです。全てを捨てて出て行きたくなる気持ち、私にはすごくわかります。ただ、私にはできない。臆病なので、すぐに家族とか仕事とかのことが頭に浮かんでしまう。

私は人生の三分の一を日本の外で過ごしています。時々、ふと、いま日本に戻ったら私の人生はどう変わるのだろう、とか、いま、仕事を辞めたら、私はどうなるのだろう、とか考えるのですが、そういうことって考えるだけで結構楽しい。

主人公の彼女には一人息子がいて、彼の葛藤がまた興味深い。私の娘も同じようなことを考える日が来るのだろうか、と想像するのも楽しかった。

著者もこれまた名前から分かるように「ハーフ」の女性なのです。彼女がどんなことを考えながらこの本を書き上げたのか、と想像するのも楽しかった。

英語もスラングは結構出てきますが、難解ではありません。

さあ、次は何読もう。

 

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カズオイシグロのノーベル文学賞受賞で思ったこと。

私の大好きな作家であるカズオイシグロがノーベル文学賞を受賞した。初めて彼の作品に接して(日の名残り)からというものずっと彼のファンなのですごく嬉しい。

 

おめでとうございます。

 

職場にも彼のファンは沢山いて、受賞のニュースを聞いて、カズオイシグロの話でしばらく盛り上がっていた。

 

帰宅してから、受賞関連の記事を色々と斜め読みしていて気づいたことがある。

 

日本のメディアは、あの手この手で、カズオイシグロと日本の関連性を強調したがっていた。一部のメディアでは彼を日本人だと紹介していた。間違いだ。

 

カズオイシグロは英国人だ。日本人の両親のもと日本で日本人として生まれたけれど、今は英国人だ。二重国籍でさえ無い。

 

彼は英語で小説を書いているし、彼の英語は完全なイギリス英語だ。

 

日本風の名前を持っていて、日本人風の容貌だからと、日本人だと決めつけるのは、もしかしたら日本が単一民族国家だからかもしれない。肌や目の色が違う人を見た瞬間に、外国人だと決めつけるのも同じ理由だろう。

 

イギリスには、ヒンズー語の名前、アラビア語の名前、中国語の名前、ヘブライ語の名前、色々な言語の名前がある。肌の色、目の色、体格も色々。でも、イギリス人だ。

 

イギリスに住むようになって気づいたことがある。初対面で、「どこの国の出身か」を聞かれることが全く無いのだ。ひととおり自己紹介を終えて、世間話をしてしばらく経ってから、(おそらくだが)私の英語のアクセントに気づいて、どこから来たのか聞かれる。

日本だったらどうだろうか、「日本人ぽくない顔」を見た瞬間に、「何ジンか」と質問される。

 

相手が日本人ではないと確認した瞬間から、まるで、その人との関係性が定義づけされてしまうようだ。

 

国籍をネタに話が盛り上がることもよくあるので一概に否定することはしないが、人との付き合いは、国籍という「ラベル」とは関係ないところ、個人対個人のレベルでするから、面白くなるのだと思う。

 

その人が何が好きで、何が得意で、どんな考えを持っているか、ということを「ラベル」を貼らずに掘り下げて言ったほうが楽しいと思うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

イギリスのボーディングスクール 「いじめ」はあるか

映画や小説に登場するボーディングスクールのイメージが影響しているかもしれません。娘がボーディングスクールに通っている、と言うと聞かれます。

「いじめとかスゴそうね。」

 

ボーディングスクール、デイスクールに限らず、「いじめ (Bully)」はイギリスの社会問題の一つです。いじめが原因で自ら命を絶ってしまった子供のニュースも耳にします。そして、イギリスの学校のウェブサイトに行くと、例外なく、その学校の「いじめ対策」が詳しく説明されています。どの学校も共通して「いじめは許さない」と言う毅然とした姿勢で。まあ、これはイギリスの学校でも日本の学校でも同じですよね。

 

個人的な意見ですが、いじめは、いつでも、どこでも起こりうると思います。(話は逸れますが、大人の世界でもいじめはあります。イギリスの職場で私が目撃したいじめは壮絶でした。これは、また別の機会に。)

  

我が家の娘も経験しました。

 

少し前になりますが、イースターの休みが終わろうとしていたある日、いきなり娘から打ち明けられました。「仲間外れにされていて寂しい。学校に戻るのが楽しみでない。」

 

「うわー、娘からの告白がこんな形で来るとは。」

驚いたと同時に、信頼していた学校なのにな、と少しがっかりしました。

 

娘に動揺を悟られないように、5W1H的な質問を重ねているうちに、言葉少なに語り出した娘。最後は泣き出してしまいました。

 

私も中学時代にいじめられた経験があります。でも三十年前の経験なんて、娘を前にしてなんの説得力もない、自分の無力さを感じました。

 

娘が一通り話し終えたところで、「ママとパパにどうしてほしい?クラスの先生に話してほしい?それともボーディングハウスのハウスペアレンツに話そうか」と聞きました。内心「嫌だと言うだろうな」と思っていました。私だったらまず、いじめが発覚した後の仕返しを恐れます。娘が嫌だと言っても、学校にメールした方が良いかな、とも考えていました。

 

しばらく考えていた娘は、「まず自分で先生に話してみる。」と。正直驚きでした。だって、意地悪な見方をしたら、告げ口です。チクったと言われかねません。悪化するリスクを孕んでいます。たとえ純粋に助けを求めただけだとしても。

 

でも、娘が自分の意思で決めたこと、と静かに見守ることにしました。

もちろん、内心穏やかではなかったです。

 

その夜は娘の寝顔を見ながら、まさか自分の娘がいじめられるようなことになるとは、、、私の育て方に問題があったのだろうか、グルグル考えていました。(娘に何かあるたびに自分に原因があるのでは、と思うのは私の癖です。)

 

イースター休暇が終わり、娘を学校に送り届ける時の会話は、

 

「本当に大丈夫?」

「うん。」

「先生と話したら教えてね。」

「うん。」

 

二日経っても、娘からの連絡はありません。

三日後、娘に電話をかけたついでに聞きました。

「先生と話した?」

「うん。」

「それで?」

「もう、大丈夫。」

「もう仲間外れにされてないの?」

「うん。友達は彼女だけじゃないし。」

 

拍子抜けしました。一瞬「本当に大丈夫かな」とも思いましたが、

娘の声の調子は、心配しなくてよい、と確信させるものだったので、質問責めにするのもどうかと思い、そのままに。

どうやら一件落着のようです。

 

この件を通じて良かったなと思ったことが三つありました。

 

問題に直面した娘は自分から先生に助けを求めた。後で「仕返し」に会うことを心配せずに。

 

先生に助けを求めた後に、すぐに問題が解決された。そして、それがぶり返すことが(今の所、半年以上経っても)ない。

 

その後、「仲間外れのリーダー的な女の子」とは普通に接している。新しい学年になって別々のクラスになったとはいえ、ボーディングハウスではいつも一緒、どうやっているのか詳細はわからないが、普通に学校生活を楽しんでいる様子。

 

先生からの連絡も無し。

 

正直、娘の先生がどのような話を娘たちにしたのかはわかりません。どんなマジック(私にとってはマジックとしか思えない)を使って問題を解決したのかもわかりません。

 

ただ、今回の経験を通して、娘の通う学校を今まで以上に信頼するようになりました。少しでも疑った自分を恥ずかしいとも思いました。

 

上にも書きましたが、いじめはどこでもいつでも起こりうる。大切なのはいじめのサインを目撃したら、または、自分がいじめられていると感じたら、深刻化する前にすぐに先生の助けを求められるような環境づくりなんだと思いました。

そして、先生たちはプロ。仕返しを助長するような方法で解決することはしないし、いじめが解決された後にも、普通の生活を送るように配慮してくれます。

学校というコミュニティにとって、親の役割はとても重要であることは間違い無いのですが、親はあくまでも、外から見守る存在、必要な時(求められた時)に惜しみなく手を差し伸べる存在でいた方が良いな、と思った経験でした。

イギリスのボーディングスクール 日本人の友達?

娘の通っているボーディングスクールは共学。8歳から13歳までの子供たちが通っている。

 

学校の敷地内、および周辺に、「ボーディングハウス」が点在しており、「ハウス」というだけあり、普通の家(邸宅と言う方がふさわしい)を15人から20人の子供と、ハウスペアレンツが住めるように改築してある。

 

ハウスペアレンツは、学校の職員で、現在娘が所属している「ハウス」の旦那さんはラテン語と英語を、奥さんは数学を教えている。

 

娘が一緒に生活しているハウスの子供たち国籍の内訳は、

 

イギリス 7

フランス 1

中国 1

香港 2

ロシア 1

日本 1

ニュージーランド 1

インド 1

 

とここまで書いて、なんか違うな、立ち止まってしまった。意味が無いな、と。

しかも正確な情報ではない。子供たちの中には二冊以上パスポートを持っている子が何人かいる。両親がイギリス人だけれど、入学するまで一度もイギリスに住んだことのない子も何人もいる。

 

そして、おそらく娘に、「あの子は何人なの?」と聞いて、上記の通りの答えは返ってこない。よくわからない、と答えるような気がする。子供たちの社会では、一緒にいて楽しいことがいちばん大切なことで、「どこの国から来ているか」は重要では無いのだと改めて気づかされる。

 

で、確かに、日本人の子が同じ寮にいるようだが、日本人だからと言って、特に親近感を感じているわけでもないようだ。

 

ただし、日本語のスラングを教えあったり、築地や東急ハンズに行った話で盛り上がったり、そういう日本ネタでは盛り上がっているようで。。。

 

イギリスのボーディングスクール 二年目の始まり。

娘をボーディングスクールまで送って行きました。

 

今年の夏休みは、盛りだくさんで、娘にとっては楽しいことだけではなく、悲しいことや辛いこともあったので、少し前から寮生活に戻ることの良し悪しについて考えていました。本当は一緒にいてあげた方が良いのではないかという考えと、実家の混乱から距離を置いて寮生活に戻った方が良いに違いない、という考えが、毎日交互に浮かんできていました。

夏休みの終わる三日ほど前に、娘本人から、もう少し家にいたい、と言われた時は「やっぱり、、」と不安が倍増しました。

 

それでも、新学期に必要な準備を粛々と。(話が脇道に逸れますが、ボーディングスクールに通っていると、文字どおり全ての持ち物に名前をつけなくてはなりません。衣料は、下着、制服の靴下、タイツ、ネクタイ全てにいわゆる「ネームタグ」を縫い付けなくてはならないのです。一日で終わらせようとすると、肩凝りと偏頭痛が襲ってくるので、私の場合は、一日に一時間ずつ三日かけてやりました。)

 

そしていよいよ当日、夫と私、そして今年は夫の母も一緒にオックスフォードまで娘を送って行きました。道中、あれだけ「ちゃんと爪を切るように」言ってたにも関わらず、爪を切ってなかったことが発覚したり、水筒を忘れたことに気付いたり、もう声を荒げたくなるようなことばかり、でも、この状態で娘を送り届けたら私が後悔する、と思って我慢。

 

学校まであと五分ぐらいのところに来た時はしんみりとなってしまって、私に至っては、「もっと良い思い出を作る手伝いができたのではないか、」と後悔先に立たず状態となり、、、

 

到着して、寮のドアが開いた途端、自分の部屋に走って行き、嬉々として友達とはしゃぎながら荷ほどきを始めました。しかも、新入生で寂しそうにしているルームメイトの面倒を見てあげている!ホッとすると同時に、そんなに楽しいの!と複雑な気分に。(苦笑)

 

 

 

香港にて

出張で香港にいます。

本当はもっと早く来なくてはいけなかったのだけど、娘の夏休み中、泊りがけの出張は勘弁してもらっていたので、娘がボーディングスクールに戻ったと同時に待ってました、とばかりに。

香港の空港に着いた途端、アジアを感じました。それは、湿度だったり、九月でもまだ暑い気候だったり(ロンドンを出た時は10度だったのです。)、人の歩き方だったり、私と似ている背格好だったり。

文字通り血が騒いで、とても嬉しくなりました。そして落ち着くのです。自分が溶け込んでいるのがわかります。

ホテルにチェックインしてからシンガポール時代からの友人夫婦(今は香港在住)に会いました。この夫婦、ベトナム人の奥さんとベルギー人の旦那さんというカップルなのですが、再会を喜びあうのもそこそこに、「自分がアジアに戻ってきてこんなに幸せな気分になるとは思わなかった。」と正直な気持ちを話しました。そんな気持ちをベルギー人の旦那さんは彼なりに分析してくれました。キーワードは、「生命力」、「前を見ている感じ」、「今」だそうです。妙に納得してしまいました。

 

そして、前から考えていたこと、香港の移民とヨーロッパの移民の違い、も、もしかしたらこのキーワードに隠されているのかも、と感じたのでした。

さて、明日の便でロンドンに帰りますので、朝ごはんに、屋台のお粥でも食べに行こうと思います。

 

 

両親の訪英。

遊びに来ていた両親が二週間の滞在を終えて東京に帰りました。

両親にとっては初めての英国。私だけでなく、夫も娘も結構気合を入れて楽しんでもらおうと思っていたのですが。。。

 

父親のロンドンの感想は、思っていた以上に汚い、寒い、人が多すぎる。。。え、なんか随分否定的だなあ。

それに反して母親は割と気に入ったようでした。でも、夫の実家のヨークシャーがロンドンとは比べものにならないぐらい気に入った模様。

 

私はロンドンが大好きなので、まるで、誇らしげに彼氏を両親に紹介したら、全然気に入ってもらえなかった時のような気持ちになりました。

 

まあ、人それぞれですからね。